双林寺の塑像たち

 中国は日本よりはるかに長い歴史を有する国である。そのため、遺跡などから発掘された数多くの文化財が残されており、中国各地の博物館などで見学することができる。ところが、寺院などの木造の建物は古いものが案外残されていない。寺院内の仏像なども同様である。歴代の王朝が交代するたびに、戦乱で町が破壊されたことが主な原因と思われる。
 昨年9月に中国の山西省を旅行した。ここは中国における仏教美術の宝庫である。戦乱の続いた中原から少し離れていることが、古い貴重な寺院や仏像が多く残されている理由であろう。山西省晋中市にある双林寺は彩色された塑像(わらや粘土で作られた彫刻)で有名である。寺門を入ってすぐに、天主殿の軒下に置かれた4体の金剛力士像が出迎えてくれる。いずれも写実的で力と緊張感にあふれている。さらに進むと、周囲にいくつかの仏殿が配された中庭に出る。それぞれの仏殿に入ると、そこは見事な仏教芸術の世界である。中ほどには主要な数体の仏像が置かれ、その背後、壁一面が塑像の小さな仏像や装飾で埋め尽くされている。中央の主佛はもちろん、脇佛にも注目である。写真は千仏殿の主佛である自在観音の左側に置かれた韋駄天像である。韋駄天は、四天王の一つ増長天の部下にあたるらしいが、ここではナンバー2の仏様として、名脇役を果たしている。人の背たけぐらいの大きさで、その姿はリアルで勇ましく、ほほえましくもあり、中国でも大変人気があるらしい。それ以外の仏殿にも、たくさんの見事な塑像が置かれており、見飽きることがなく、立ち去りがたい。
多くの人に訪れることを是非お勧めしたい。

by Dagui

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toyochu

最終更新日:2025年04月23日